スキューバダイビングを楽しむダイバー

スクーバダイビング、スキューバダイビング(scuba diving)とは

スクーバダイビング

、空気を詰めたタンクを使ってのダイビング(潜水)である。これに対して息をこらえて行う潜水をフリーダイビング、地上からホースで空気を供給する潜水を送気式潜水(フーカー潜水)と呼ぶ。日本にはアメリカのアクアラング社 (Aqua Lung) が紹介し、一時期は社名「アクアラング (Aqua-lung) 」がスクーバダイビングの意味で使われることも多かった。なお、本記事では特に断らない限り、「ダイビング」を「スクーバダイビング」の意味で使用する。

語源・由来

スクーバとは、英語のSelf Contained Underwater Breathing ApparatusのアクロニムであるSCUBAのカナ表記であり、空気などの呼吸ガスを携行する方式の潜水器具(ジャック=イヴ・クストーが発明者の一人として有名)を指す。自給式水中呼吸装置とも訳される。英語のSCUBAは本来潜水器具を指す名詞であるが、現在では、この方式の器具を用いて行う潜水活動をもスクーバと言い、また形容詞的語としても良く使われる。
スクーバダイビングは、海事工事、海難救助、軍事などの職業的活動としても行われるが、一般にはレジャーダイビングを示すことが多い。

潜水限界

一般的な最大の潜水可能深度は40m程度である。潜水可能時間は最大で3時間半程度(ただし、潜水深度が大きいほど短くなる)。初心者やレジャーダイビングの場合、平均的な潜水深度は20m前後、潜水時間は45分前後で、1日に2~4回潜ることが多い。最大の潜水可能深度を40mに設定している理由としては、潜水病を予防する意味がある。水深40mの深海では「空気ボンベ」で地表の5倍の酸素を吸収できる。しかし酸素も窒素も必要以上に体内に溶けてしまい、急浮上したとき圧力が小さくなると溶けきれない空気が気泡となって血液中に生じる。この気泡が血流を阻害し後遺症が生じる[1]恐れがあるからである。
そのため、Cカードのランクでは、技術レベルに応じて潜ることができる深度が決められており、これを破ると事故の際に保険が下りない場合がある。この深度は保険の規約によっても異なるが、スクーバダイバー(教育機関によって名称が異なる)で約12m、オープンウオーターダイバー(教育機関によって名称が異なる)で約18m、アドバンスドオープンウオーターダイバー(教育機関によって名称が異なる)で約30m、ディープダイビング・スペシャリティ(教育機関によって名称が異なる)で約40mである。テクニカルダイビングの限界は約100mである。 しかし、ファンダイビング(講習を伴わない純粋に楽しみのためのダイビング)の場合には、最大許容深度がCカードレベルによって制約されることは事実上少なく、ダイバー本人とバディ及びガイドダイバーの判断に委ねられる。それは、Cカードレベルはダイバーの総合的能力を判断する為の判断材料の中のほんの一部に過ぎず、経験と習熟度、体力、潜水力等がより重要であるからである。

潜水時間

スクーバ・タンクの容量は通常8 – 14リットル(10リットルタンクが最多)ほどであり、始めに通常150 – 200気圧程度[2](約1.8 – 3.6キログラム)の圧縮空気を詰める。アマチュアダイバーの場合、通常はスクーバ・タンクを1本だけ使うため、この空気が無くなるまで[3]の時間が一つの目安となる。深度が浅い場合には1時間程度であり、深くなるほど呼吸に使われる空気の圧が上がり、時間が短くなる。一般的に、潜水可能時間はダイバー個人の水面空気消費率(1気圧環境、すなわち水面における1分間あたりの空気消費量)から、タンク容量×利用可能圧÷(1+平均潜水深度÷10)÷水面空気消費率の計算により見積もられる。例えば容量12リットルのタンクを使用し、150気圧の空気を使用可能で、潜水中の平均深度15メートル、ダイバーの水面空気消費率が12リットルの場合、12×150÷(1+15÷10)÷12=60分になる。なお、通常のレクリエーショナルダイビングにおける水面空気消費率は、上級ダイバーで10 – 14リットル/分程度(小柄なダイバーでは8リットル/分程度になる場合もある)、初級ダイバーで20 – 30リットル/分程度である。すなわち、同じ上記の条件でも24 – 90分と、ダイバーによって潜水可能時間には大きな差が生じる。なお、実際の空気消費量は、体調、水温、水の流れや、水中における運動度合い等の諸条件によって変化するため、個々の潜水における実際の潜水可能時間が、上記の式で算出された潜水可能時間と乖離することも多い。
また、一般的には水圧が高くなるほど減圧症の危険が高くなるため、減圧停止を行わないレクリエーショナルダイビングの場合には、深度10メートルで3時間半程度、深度20mで45分程度、深度40mで9分程度を超えて潜水してはならない。先に挙げた限界時間近くまで潜水していた場合には、地上で3時間程度の休憩が必要となる。もっともこの制約は、減圧に関する教育・訓練を受けた職業ダイバーやテクニカルダイバーには適用されず、実際これらのダイバーによっては、上記の限界時間を越えた減圧潜水もごく日常的に行われている。しかし、職業ダイバーでも、減圧潜水を頻繁に行なっているダイバーは稀で、通常は浅場での作業が中心である。 レクリエーショナルダイバーは減圧停止を行なうことを前提とした「減圧潜水」を行なってはならない。 また、浅い深度で長時間潜ることも減圧症の原因となることが近年の研究で明らかになり、「10mだからいくら潜っても大丈夫」と考えることは危険である。

必要な資格と器材

日本の法律では業務以外の目的でスクーバダイビングをするのに資格は必要ない[4]が、レジャーダイビングを行う上で潜水器材のレンタルを含むダイビング関連サービスを受けるためにはほとんどの場合Cカードの提示が必要であることから、Cカードを取得しなければ事実上スクーバダイビングをすることはできない。(ただし、Cカード認定インストラクターが同行する体験ダイビングやCカード取得のための講習では必要ない)Cカードに関しては後述する。
一方、スクーバダイビングは、器材に頼るレジャーであり、器材選択は安全管理の基本にもなる。
本項では、主要な器材[2]と機能のみ列挙する。より詳しい内容は別項「ダイビング器材」を参照。
スクーバ・タンク – 呼吸ガス(ほとんどの場合、普通の空気)を水中に携行するための容器。スチール製又はアルミ製。
レギュレーター – タンク内の圧力を呼吸に適した圧(周囲圧=水圧)に自動的に調整しダイバーに供給する。
ダイビングスーツ – ダイバーを低体温と皮膚の損傷から保護する。主にウェットスーツとドライスーツに分けられる。
BC、BCD – 水中では浮力を調節する。水面では救命具同様、プラス浮力を確保出来る。
マスク – いわゆる「水中メガネ」。水中で物を見やすくする。水泳用と違い、鼻も入る構造となっている。
フィン – いわゆる「足ヒレ」。水面・水中での移動を容易にする。ブーツを履くタイプと素足で履くタイプがある。
スノーケル – 水面で顔面を水につけたまま呼吸できるようにする。左側に取り付けるのが普通。
ウェイト – ダイビングスーツによる余分の浮力を相殺し潜行を可能にする。主として着用するスーツにより必要ウェイト量が変わる。
ウェイトベルト – ウェイトを身体に固定する。腰への負担を軽減出来る製品もある。
残圧計 – タンク内の空気の残量を表示する。アナログが大半ではあるが、デジタル表示の製品もある。
深度計 – 潜水深度を表示する。現在ではあまり使われず、多くはダイブコンピューターにとって換わられている。
コンパス – いわゆる「方位磁石」。水中で方向を表示する。一部ではあるがデジタルコンパスも市販されている。
時計 – 防水時計である。近年ではダイバーウォッチを着けたダイバーは稀で、ダイブコンピューターが一般的。
これら器材はレンタルもされているし、購入することもできる。なお、レクリエーショナルダイバーの場合、スクーバ・タンクは、重量があり運搬が大変なこと、また保管・運搬に法規制を受ける関係から、購入せずにその都度レンタルするケースが多い。 スクーバ・タンクは圧縮空気を使うが、酸素濃度を増やした(窒素濃度を減らした)「エンリッチド・エア;ナイトロックス」を使うこともある。 空気潜水よりも最大深度が厳しく制限されるが、レクリエーションダイバーが最も頻繁に潜る深度である10 – 30mを少し超える辺りの深度で無減圧限界時間を伸ばすことが出来る。また、空気潜水と同等のプロフィールで潜水した場合、減圧症の罹患率を下げる効果があると考えられている。 特に深く潜る場合にはヘリオックスガス(酸素・ヘリウム混合ガス)やトライミックスガス(酸素・窒素・ヘリウム混合ガス)を用いることもあり、何れも酸素濃度は空気よりも低く設定する(深く潜るほど、酸素濃度は低くしなければいけない)。 当然のことながら、空気(中層用)やエンリッチド・エア;ナイトロックス(浅場用)を含む数本のタンクを携行することが必要となり、加速減圧(体内窒素の急速な放出)の為に純酸素を携行する場合もある。最近ではリブリーザーを用いるダイバーも徐々に増えている。

必要な費用

講習費用の内訳は一概には言えないが、指導団体が提供する教材や申請代、現地の施設使用料、現地で借りるスクーバタンク代、インストラクターに払うレッスン代(講習費)などがあり、その他にお店や海までの交通費、宿泊する場合は宿泊代などが挙げられる。 お店によっては、ダイビングスポットへの旅行の費用や交通費、宿泊代などが含まれている場合もあるが、これは旅行業法上の様々な問題もある。 バブル期には12 – 15万円程度が標準とされていたオープンウォーターダイバーコース(教育機関により名称は異なる)の総費用は、近年では都市型ショップの場合、6 – 9万円程度、海沿いの現地サービス(交通費・宿泊費別途必要)の場合、4 – 7万円程度が平均的である。 ダイビング器材はレンタルが可能である。ただし、可能な限り体に合った器材を使った方が安全という考えや、講習終了後のダイビングでも常に同一の器材を使用した方が安全という考えから、一部、あるいは全部の器材の購入を講習の条件としたり、条件とはしないまでも推奨するスクールもある。

潜水場所

港湾、河川等を除いて、法律上は潜水の実施に許可を要さない水域も少なくない。しかし、基本的に潜水の対象となるのは観察や鑑賞の対象となる水棲生物が多く棲息する水域であり、このような水域での潜水は、あらかじめ同意を得ない限り、これら生物の採取で生計を立てている漁業関係者とのトラブル発生や、また捜査機関による密漁疑いでの職務質問等の取調べ対象になる可能性も高い。このような背景から、日本では、沖縄県等の一部地域を除いては、個人・当該地域外のダイビングツアー・ダイビングスクール催行業者にかかわらず、地域の漁業協同組合と良好な関係を構築している、あるいは漁業協同組合が経営している、いわゆる「現地サービス」と呼ばれる業者を介して潜水を実施することが大半である。かつては、ダイバーは漁場を荒らす厄介者として忌避される傾向が強かったが、現在では、密漁を行う者はダイバーの極一部であることが広く認知されるようになったこと、またサービスの利用のみならず、食事、宿泊等の消費で地域経済の活性化につながるとの認識が広がったことから、積極的なダイバーの受け入れに方針転換した地域も多くなってきている。

出典:wikipedia
出典:jammarineclub